なぜシベリウス2番を演奏するのか?

それは、発起人のこの曲への思い入れに、大きく由来しています。

当オケ発起人、今崎あゆみは、オケを始めた1年目に家族を亡くしました。
彼女は亡くなる直前に、今崎が所属する大学オケの定期演奏会でシベリウス2番を聴きました。
しかし今崎本人はシベリウスは降り番(演奏しない人)で、彼女に弾いて聴かせることはありませんでした。

あの人が最後に聴いた曲、でも、自分が演奏することが出来なかった曲。シベリウス2番。
「この曲は、いずれ絶対に演奏しよう」と、今崎は固く心に留めたのであります。

それから今崎は首都圏のアマオケをほぼあまねく渡り歩き、数多の交響曲を演奏しました。
ところが、なんと一度もシベリウス2番を演奏する機会は訪れませんでした。
シベリウス2番といえばスタンダード中のスタンダード。その弾幕を避ける方が難しいとすら思えます。

――今崎がオケと出会って10年、その機会はやってきました。
あるいは、曲の方がこの時を待っていたのかもしれません。
さっそく今崎はオケ結成のために、指揮者を招き、曲を選び、人を集めました。
いや、実際は「人がどこからともなく集まって来た」という言葉が相応しいように感じます。
今崎の一声で、彼女を知るプレイヤーが首都圏のあちこちから名乗りを上げました。そしてほどなく交響曲を演奏できる人数が集められたのです。

一人の発起人の個人的な思い「シベ2を演奏したい!」から始まった「あえてのシベ2プロジェクト」は、今や実現も間近です。
その大きな成功要因は奇しくも、失った人との絆を見出すために広く長く続けてきた、今崎自身の音楽活動にあったのでした。

なぜシベリウス2番を演奏するのか?
その答えは実はプレイヤーの数だけあります。ある人は好奇心、ある人はリベンジ、シベリウスよりラベルが吹きたいから、打ち上げで酒が飲みたい、等々。
ある人は、鎮魂と祈りを込めるのでしょう。
その中で共通しているのは、一発オケの一発だからこその輝きにみなが共感している点のような気がします。

真夏の夜にたった一度きり演奏される音楽に、極上のエンタテインメントを。団員のだれもがその日を楽しみにしていることに間違いはありません。
ここまで読んでくださったあなたが、このプロジェクトに当日ご参加いただけることを、心よりお待ち申し上げます。

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